【2026年度診療報酬改定】身体的拘束最小化に係る取組の評価を徹底解説|新設加算40点・減算2区分化のすべて

【2026年度診療報酬改定】身体的拘束最小化に係る取組の評価を徹底解説|新設加算40点・減算2区分化のすべて

令和8年度改定で「飴と鞭」が強化。新設の40点加算・体制基準40点減算・実績基準20点減算の仕組みと実務対応を詳しく解説します。

令和8年度改定
身体的拘束最小化
40点加算
減算
療養病棟
地域包括ケア病棟
2026年度

1. 今改定の「飴と鞭」構造

令和8年度診療報酬改定では、身体的拘束最小化への取り組みに対して「飴と鞭」の両面から評価が大幅に強化されました。

区分 内容 点数
飴(加算) 組織全体で高水準の拘束最小化に取り組む施設を評価する
「身体的拘束最小化推進体制加算」を新設
+40点/日
鞭①(体制基準未達) 身体的拘束最小化の「体制に係る基準」を満たさない場合の減算 -40点/日
鞭②(実績基準未達) 体制基準は満たすが「実績等に係る基準」を満たさない場合の減算 -20点/日
改定の背景

これまでの通則では「身体的拘束最小化の基準を満たさない場合は40点減算」と一律でした。令和8年度改定では基準を「体制」と「実績」の2つに分離し、体制が整っていれば実績未達でも減算幅が半分(20点)に緩和される一方、さらに高水準の取り組みには加算(40点)で報いる構造に再設計されました。

2. 改定前後の比較一覧

項目 改定前(令和6年度) 改定後(令和8年度)
基準の区分 一律(区分なし) 「体制基準」と「実績基準」の2区分
減算額(体制未達) 40点/日 40点/日(変更なし)
減算額(実績のみ未達) (区分なし・一律40点) 20点/日(緩和)
加算 なし 身体的拘束最小化推進体制加算 40点/日(新設)
加算の対象病棟 療養病棟・障害者施設等・地域包括ケア病棟・特殊疾患病棟等

3. 減算の仕組み(2区分化)

令和8年度改定の最大の変更点の一つが、減算規定の「2段階化」です。従来は基準を満たさなければ一律40点の減算でしたが、今改定で以下のように整理されました。

パターン別の影響

体制基準 実績基準 結果
充足 充足 減算なし(加算申請の対象にもなりうる)
充足 未達 20点/日 減算
未達 40点/日 減算
注意

体制基準を満たさない場合、実績の状況にかかわらず40点の減算となります。まず「体制基準」の整備が最優先です。

4. 体制に係る基準とは

「体制に係る基準」は、施設として身体的拘束最小化に向けた組織的な体制を整えているかどうかを問う基準です。以下の要件をすべて満たす必要があります。

1

身体的拘束最小化チームによる委員会を3か月に1回以上開催

身体的拘束の実施状況を踏まえ、最小化に向けた具体的な取り組みを検討するための委員会を、3か月に1回以上定期的に開催することが求められます。

2

拘束実施病棟への積極的な検討・介入

身体的拘束が行われている病棟に対し、最小化に向けた具体的な検討を積極的に行うこと。チームが現場の状況を把握し、改善に向けた提言を行う体制が必要です。

3

職員研修を年2回以上実施

「患者の尊厳の保持の重要性」および「身体的拘束の最小化」に関する研修を、入院患者に関わるすべての職員を対象として年2回以上実施します。

補足:掲示・ウェブ公表の義務
体制基準の前提として、①原則として身体的拘束を行わない方針を定めること、②拘束の実施状況を医療機関の見やすい場所に掲示すること、③掲示内容をウェブサイトにも掲載することが求められています。

5. 実績等に係る基準とは

「実績等に係る基準」は、実際の身体的拘束の実施状況や取り組みの成果を問う基準です。以下のいずれかを満たすことで基準を充足します。

【選択肢A】実施割合による基準

実績数値による充足

当該病棟における身体的拘束の実施割合が15%以下であること。

【選択肢B】取り組みによる充足(実施割合が15%超の場合)

実施割合が15%を超える場合でも、以下の取り組みをすべて実施していれば基準を満たすことができます。

取り組み要件 内容
委員会の開催 身体的拘束廃止に向けて、3か月に1回以上委員会を開催する
具体的な検討 拘束の解除や代替策の導入に向けた具体的な検討を行う
職員研修 年2回以上の研修を実施する
「実績等に係る基準」の選択肢Bは、体制基準の要件(委員会・研修)と重複する部分が多いです。体制基準をきちんと満たしていれば、選択肢Bの要件も同時に充足できる場合があります。取り組みの記録・文書化が重要です。

6. 新設:身体的拘束最小化推進体制加算(40点/日)

令和8年度改定で新設された「身体的拘束最小化推進体制加算」は、組織全体で高水準の拘束最小化に取り組む施設を積極的に評価する加算です(1日につき40点)。

算定要件(施設基準)

1

管理者(院長・看護部長等)による方針表明と職員への周知

病院長や看護部長が、身体的拘束の最小化に向けて病院全体で取り組むことを表明し、職員に周知していること。

2

年2回以上の院内講習(全職員対象)

身体的拘束最小化に関する講習が年2回以上実施されており、入院患者に関わるすべての職員が受講していること。

3

拘束用具の一元管理

身体的拘束最小化チームにより、拘束に使用する用具が病棟外の1か所で管理され、使用状況・解除に向けた検討状況を把握するとともに、必要に応じて解除に向けた提案が行われていること。

4

拘束実施日数の割合が3%以下(届出1年以内は5%以下)

当該病棟の身体的拘束を実施した日数の割合が3%以下であること。加算届出から1年以内は5%以下が適用されます。

算定対象病棟

身体的拘束最小化推進体制加算は以下の入院料を算定する病棟が対象です。
①療養病棟入院基本料 ②障害者施設等入院基本料 ③有床診療所療養病床入院基本料
④地域包括ケア病棟入院料 ⑤特殊疾患入院医療管理料 ⑥特殊疾患病棟入院料

加算と減算の関係(収益シミュレーション)

状況 1日あたりの影響 30日入院の場合
加算を算定できる(拘束3%以下等) +40点(400円) +12,000円
基準充足(加算なし・減算なし) ±0 ±0
体制基準は満たすが実績基準未達 -20点(200円) -6,000円
体制基準も未達 -40点(400円) -12,000円
注意

上記は1患者あたりの試算です。病棟全体で見た場合、在院患者数×減算点数が毎日発生するため、体制未整備による財務的影響は非常に大きくなります。

7. 対象病棟・対象入院料まとめ

入院料・管理料 減算(体制未達:40点) 減算(実績未達:20点) 加算(推進体制:40点)
一般病棟入院基本料(急性期等) 対象 対象 対象外
療養病棟入院基本料 対象 対象 対象
障害者施設等入院基本料 対象 対象 対象
有床診療所療養病床入院基本料 対象 対象 対象
地域包括ケア病棟入院料 対象 対象 対象
特殊疾患入院医療管理料 対象 対象 対象
特殊疾患病棟入院料 対象 対象 対象
減算規定はほぼすべての入院基本料が対象ですが、新設の加算(身体的拘束最小化推進体制加算)は療養病棟・障害者施設等・地域包括ケア病棟・特殊疾患病棟等に限定されています。急性期一般病棟は加算の対象外です。

8. 実務対応チェックリスト

体制基準の整備

身体的拘束最小化チームを設置・機能させる(多職種参加)
身体的拘束最小化委員会を3か月に1回以上開催し、議事録を作成・保管する
拘束が行われている病棟への定期的な訪問・介入の仕組みを作る
年2回以上の職員研修(対象:入院患者に関わる全職員)を計画・実施する
「原則として身体的拘束を行わない」方針を文書化し、院内掲示する
拘束実施状況を院内の見やすい場所に掲示し、ウェブサイトにも公表する

実績基準の確認

当該病棟の身体的拘束実施割合を定期的に集計し、15%以下かどうか確認する
実施割合が15%超の場合は選択肢B(委員会・研修・具体的検討)で対応可能か確認する
各病棟の拘束件数・実施日数を日常的にモニタリングする体制を整える

加算算定を目指す場合

院長・看護部長が拘束最小化の方針を表明し、職員への周知記録を残す
拘束用具を病棟外の1か所で一元管理する仕組みを構築する
拘束実施日数の割合が3%以下(届出1年以内は5%以下)を達成・維持できるか確認する
地方厚生局への届出書類を準備する

9. よくある質問(FAQ)

Q急性期一般病棟も今回の減算の対象ですか?
Aはい。減算規定は一般病棟入院基本料を含むほぼすべての入院基本料が対象です。ただし、新設の「身体的拘束最小化推進体制加算(40点)」は急性期一般病棟では算定できません。加算は療養病棟・障害者施設等・地域包括ケア病棟・特殊疾患病棟等に限定されています。
Q「実施割合15%以下」の計算方法を教えてください。
A実施割合は「身体的拘束を実施した日数の合計 ÷ 当該病棟の在院患者延べ日数」で算出します。例えば、月間延べ在院日数が300日の病棟で、拘束を実施した日が45日以内(15%以下)であれば基準を充足します。拘束実施の記録を日単位で正確に管理することが重要です。
Q加算の「拘束実施日数の割合3%以下」と、減算免除の「15%以下」はどう違いますか?
A「15%以下」は減算を回避するための実績基準(最低ライン)です。一方「3%以下」(届出1年以内は5%以下)は加算(40点)を算定するための高水準の実績基準です。両者は別の基準であり、3%以下を達成できれば同時に15%以下も満たすことになります。
Q体制基準は満たしているが実績が15%を超えた場合、どうすれば減算を20点に抑えられますか?
A体制基準を満たした上で「選択肢Bの取り組み」(①委員会を3か月に1回以上開催、②解除・代替策の具体的検討、③年2回以上の研修)をすべて実施することで、実績等に係る基準を満たしたとみなされ、減算は20点になります。記録・文書化を徹底しておくことが重要です。
Q「身体的拘束最小化チーム」はどのようなメンバーで構成すればよいですか?
A告示では具体的な職種の規定はありませんが、医師・看護師・リハビリスタッフ・相談員・薬剤師など多職種で構成することが望ましいとされています。また、チームが機能していることを示すために、委員会の開催記録・活動実績を文書で残すことが重要です。
Q有床診療所は加算の対象になりますか?
Aはい。有床診療所の中でも「療養病床入院基本料」を算定する施設は、身体的拘束最小化推進体制加算(40点)の算定対象となります。一般の有床診療所入院基本料を算定する施設は加算の対象外ですが、減算規定は適用されます。
※本記事は令和8年度診療報酬改定の概要を解説することを目的としており、算定の可否・詳細要件については必ず厚生労働省の告示・通知および地方厚生局への確認を行ってください。本記事の情報に基づいて生じた損害等について、当サイトは一切の責任を負いかねます。最終更新:2026年5月

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