【2026年度診療報酬改定】医薬品適正使用の変更点とは?
長期処方・リフィル・後発医薬品・向精神薬を開業医・薬局向けに解説
特定疾患処方管理加算の見直し・後発医薬品加算の再編・向精神薬オンライン処方制限・残薬対策強化など全変更点を整理。
2026年(令和8年)6月の診療報酬改定では、「医薬品の適正使用」が重点分野の一つに位置づけられ、処方・調剤に関わる多数の評価が見直されました。長期処方・リフィル処方箋のさらなる推進、後発医薬品関連加算の大幅再編、向精神薬のオンライン処方制限の明確化、残薬対策の強化など、開業医・病院・薬局のいずれにも影響する内容が含まれています。
この記事では「処方側(医師・病院)に何が変わるか」「薬局・調剤側に何が変わるか」「患者向けの対応に何が必要か」の3つの視点からわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
① 改定の全体像・背景
医療費の効率化・患者の利便性向上・薬の安全な使用確保という3つの政策目標が今改定の医薬品適正使用領域に反映されています。
- 長期処方・リフィル処方箋の促進:短期処方の評価を下げ、長期処方・リフィルへの移行を加速
- 後発医薬品加算の再編:後発医薬品調剤体制加算を廃止し、地域支援・医薬品供給対応体制加算へ統合
- バイオ後続品(BS)の使用推進:薬局向けの新加算を創設
- 向精神薬の処方制限:オンライン診療での処方ルールを明確化
- 残薬・ポリファーマシー対策:在宅・外来での薬剤管理強化
- 電子処方箋の活用:重複投薬防止・薬剤一元管理の推進
② 長期処方・リフィル処方箋のさらなる推進
今改定では、安定した慢性疾患患者に対する長期処方・リフィル処方箋の活用を、制度面からより強力に推進する方向性が打ち出されました。
医療機関への周知・掲示義務
特定疾患療養管理料・地域包括診療加算・地域包括診療料等を算定する医療機関に対して、「患者の状態に応じて28日以上の長期処方またはリフィル処方箋での対応が可能であることを、院内の見やすい場所に掲示する」ことが施設基準の要件に追加されました。
| 対象となる算定料・加算 | 追加された要件 |
|---|---|
| 特定疾患療養管理料 | 長期処方・リフィル対応可能の掲示義務 |
| 地域包括診療加算 | 長期処方・リフィル対応可能の掲示義務 |
| 地域包括診療料 | 長期処方・リフィル対応可能の掲示義務 |
上記の算定料・加算を届け出ている医療機関は、令和8年6月1日の施行前に院内掲示物を準備・設置する必要があります。掲示未対応の場合は施設基準を満たさないことになります。
③ 特定疾患処方管理加算の見直し
長期処方・リフィルへの誘導の一環として、特定疾患処方管理加算が大きく見直されました。
| 区分 | 改定前 | 改定後 | 変更内容 |
|---|---|---|---|
| 加算1(処方期間28日未満) | 18点 | — | 廃止 |
| 加算2(処方期間28日以上) | 66点 | 56点 | 減点(−10点) |
| リフィル処方箋での算定 | 不可 | 可能(新設) | リフィル処方時も算定可能に |
28日未満の短期処方に対する加算1(18点)を廃止することで、短期処方の繰り返しを制度的に促さない方向に転換されました。加算2(28日以上)は引き続き算定できますが10点減点。一方、リフィル処方箋でも加算が算定可能になり、リフィルへの移行を後押ししています。
④ 後発医薬品関連加算の大幅再編
薬局における後発医薬品の使用促進体制を評価してきた「後発医薬品調剤体制加算」が廃止され、新たな体制の評価に再編されました。
後発医薬品調剤体制加算の廃止
これまで薬局の後発医薬品調剤割合に応じて算定していた後発医薬品調剤体制加算(4段階)が廃止となります。
地域支援・医薬品供給対応体制加算の新設
廃止された後発医薬品調剤体制加算に代わり、地域支援体制加算が再編され、地域支援・医薬品供給対応体制加算として5段階の評価に再整理されます。
| 変更前 | 変更後 |
|---|---|
| 後発医薬品調剤体制加算(4段階) | 廃止 |
| 地域支援体制加算(従来) | 地域支援・医薬品供給対応体制加算(5段階)に再編 |
| — | 全区分で後発医薬品使用率85%以上が要件に |
後発医薬品の普及が進み、使用率が高水準となったことで、従来の後発医薬品推進加算の意義が変化しました。今後は「後発医薬品を使うこと」だけでなく、「地域に薬剤を安定供給する体制を整えていること」を包括的に評価する枠組みへ移行されます。
⑤ バイオ後続品(バイオシミラー)の推進
バイオ医薬品の後続品(バイオシミラー/BS)の使用をさらに促進するため、薬局向けの新加算が設けられました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 新設加算名 | バイオ後続品調剤体制加算 |
| 算定主体 | 薬局(調剤報酬) |
| 算定要件 | バイオ後続品の調剤割合が一定水準以上であること等 |
| 目的 | 高額なバイオ医薬品の後続品への切り替え促進・医療費適正化 |
バイオ医薬品(生物学的製剤)の特許満了後に開発された後続品です。化学合成薬のジェネリック医薬品と同様の位置づけですが、製造がより複雑で、先行バイオ医薬品と「同等/同質」であることが求められます。インスリン・エリスロポエチン・モノクローナル抗体製剤等のバイオシミラーへの切り替えが今後の課題です。
⑥ 向精神薬のオンライン診療での処方制限
オンライン診療における向精神薬の処方ルールが明確化されました。
| 診療の状況 | 向精神薬の処方 |
|---|---|
| 初診をオンラインで実施 → 再診も引き続きオンラインで実施 | 処方不可(対面診療を経る必要あり) |
| 対面診療を経た後の再診でのオンライン診療 | 処方可(一定の要件のもと) |
オンライン診療で初めて患者を診察し、その後もオンラインのみで継続診察している場合は、向精神薬(睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬・抗精神病薬等)を処方することは認められません。必ず対面診療を経たうえで処方判断を行う必要があります。
オンライン診療の普及に伴い、一部で不適切な向精神薬処方(対面なしでの長期大量処方等)が懸念されるようになりました。今改定ではルールを明確化することで、向精神薬の安全な処方管理を確保しています。
⑦ 残薬対策・ポリファーマシー対策の強化
在宅医療や外来管理における残薬確認・ポリファーマシー(多剤投与)対策が強化されました。
在宅での残薬確認義務の強化
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料を算定する際に、服薬状況(残薬の状況を含む)の確認が算定要件として明確に位置づけられました。訪問時に患者や家族から残薬の状況を聴取し、適切な服薬管理・処方内容の調整を行うことが求められます。
地域包括診療料等での薬剤一元管理
地域包括診療加算・地域包括診療料を算定する患者については、オンライン資格確認・電子処方箋システム等を活用して、患者が受診している医療機関すべてを把握し、処方されている医薬品すべてを管理することが要件に加わりました。
| 対応が必要な場面 | 求められる対応 |
|---|---|
| 在宅訪問時 | 残薬の状況を患者・家族から聴取し記録する |
| 地域包括診療料等の管理患者 | 電子処方箋・オンライン資格確認で他院処方薬を把握・一元管理する |
| 外来でのポリファーマシー患者 | 処方薬の種類・量を定期的に見直し、不要薬の整理を行う |
⑧ 医療DX・電子処方箋の活用促進
電子処方箋の普及促進と、それに伴う重複投薬防止の仕組みが評価に組み込まれました。
⑨ 注意事項・よくある間違い
28日未満の処方に算定していた加算1(18点)は廃止されます。令和8年6月以降も誤って算定し続けると不正請求となります。電子カルテ・レセコンの設定変更を施行前に完了させてください。
薬局において後発医薬品調剤体制加算を収入の柱としていた場合、廃止後は収入が減少します。新設の地域支援・医薬品供給対応体制加算への移行要件を確認し、算定継続の見通しを立てることが重要です。
特定疾患療養管理料等を算定する医療機関が長期処方・リフィル対応可能の掲示をしなければ、当該算定料の施設基準を満たさなくなります。掲示を後回しにせず、令和8年6月1日施行に合わせて準備してください。
在宅時医学総合管理料等の算定にあたり、残薬確認を行ったことの記録が求められます。口頭確認だけでなく、診療録・訪問看護記録等への記載が算定根拠となります。
⑩ よくある質問
⑪ まとめチェックリスト
本記事は2026年4月時点の情報(厚生労働省公表資料・答申・告示・通知等)をもとに作成しています。診療報酬・調剤報酬の算定要件・点数は改定後に公表される告示・通知が正式情報です。算定にあたっては必ず最新の通知・施設基準をご確認ください。また、個別の算定可否については担当の地方厚生局または専門家にご相談ください。

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