【2026年度診療報酬改定】物価対応料の新設と入院基本料等の見直しを徹底解説|医科・歯科の算定方法・点数一覧

医療

【2026年度診療報酬改定】物価対応料の新設と入院基本料等の見直しを徹底解説|医科・歯科の算定方法・点数一覧

光熱水費・医療材料費・食材料費の高騰に対応する「物価対応料」が新設。医科外来・在宅・入院、歯科それぞれの点数と算定要件、入院基本料等の改定ポイントをまとめました。

2026年度改定
物価対応料
入院基本料
医科・歯科
病院経営
診療所経営

1. 物件費高騰への対応―改定の背景と全体像

2026年度(令和8年度)診療報酬改定の本体改定率は+3.09%と、30年ぶりに3%を超える大幅な引き上げとなりました。このうち物価対応分は+0.76%を占め、医療機関が直面する光熱水費・医療材料費・委託費・食材料費の高騰への対応が主な目的です。

本体改定率+3.09%の内訳
区分 改定率
医療従事者の賃上げ対応分 +1.70%
物価対応分 +0.76%
その他(機能強化等) +0.63%
合計 +3.09%

物価対応分+0.76%の配分は診療種別によって異なります。

対象 物価対応分の配分率
病院 +0.49%
医科診療所 +0.10%
歯科 +0.09%
調剤 +0.08%

物価対応の手法として今改定では①物価対応料(新設加算)と②入院基本料・食費等の直接引き上げの2本柱が採用されました。物価対応料は令和8〜9年の2か年で段階的に引き上げる仕組みです。

2. 物価対応料の3区分

区分 対象 令和8年6月〜
令和9年5月
令和9年6月〜 届出
医科
外来・在宅物価対応料
外来・在宅患者(入院中を除く) 初診2点
再診2点
訪問3点
初診4点
再診4点
訪問6点
不要
医科
入院物価対応料
入院患者(入院料区分ごとに点数異なる) 区分により
13〜66点/日
上記の
2倍
不要
歯科
外来物価対応料
歯科外来患者(入院中を除く) 初診3点
再診1点
初診6点
再診2点
不要
ポイント:届出不要・自動算定

物価対応料はいずれも別途の施設基準届出が不要です。基本診療料(初診料・再診料・入院料等)を算定している患者に対して自動的に加算できます。ただしレセプト請求システムへの設定反映は各医療機関で対応が必要です。

3. 医科外来・在宅物価対応料の点数と算定要件

点数

算定場面 令和8年6月〜令和9年5月 令和9年6月〜
初診時 2点 4点
再診時 2点 4点
訪問診療時 3点 6点

算定要件・留意事項

項目 内容
算定単位 1日1回
算定できない患者 入院中の患者(入院料を算定している患者)
対象施設 保険医療機関(病院・診療所を問わず全施設)
電話再診等 電話等による再診も含め再診料を算定する場合は算定可
施設基準届出 不要

外来患者が多い診療所にとって再診2点(令和9年以降4点)は毎月の算定件数に比例して収益に直結します。年間の外来患者数にかけてシミュレーションしておきましょう。

4. 医科入院物価対応料の点数一覧(入院料区分別)

入院物価対応料は、入院基本料・特定入院料・短期滞在手術等基本料を算定している患者に対して、入院料の区分に応じた点数を1日ごとに加算します。

入院料区分 令和8年6月〜
令和9年5月(/日)
令和9年6月〜
(/日)
急性期病院A一般入院料 66点 132点
急性期病院B一般入院料 58点 116点
急性期1(旧:急性期一般入院料1) 58点 116点
急性期2〜5 区分により異なる 2倍
地域一般入院料1・2 32点 64点
療養病棟入院料1 18点 36点
精神病棟入院基本料(10対1) 13点 26点
特別入院基本料(一般病棟) 17点 34点
算定上の注意

入院物価対応料は1日につきの加算です。入院日数が多いほど累積効果が大きくなります。急性期病院Aで66点×365日=24,090点(約24万円相当)と年間収益への影響は無視できません。令和9年6月以降はその2倍となります。

届出・算定の実務

別途届出は不要ですが、各入院料区分に対応した点数がレセプトシステムに正しく反映されているか確認が必要です。システム会社へのアップデート依頼は早めに行ってください。

5. 歯科外来物価対応料の点数と算定要件

点数

算定場面 令和8年6月〜令和9年5月 令和9年6月〜
初診時 3点 6点
再診時 1点 2点

算定要件

項目 内容
算定単位 1日1回
算定できない患者 入院中の患者
対象施設 歯科を標榜する全保険医療機関
施設基準届出 不要

歯科は物価対応分の配分が+0.09%と医科に比べると少ないものの、外来物価対応料の新設に加え、歯科初診料が267点→272点へ引き上げられています(別途改定)。2つの効果が合わさり、外来患者が多い歯科診療所では一定の収益改善が見込まれます。

6. 入院基本料等の点数引き上げ

物価対応料の新設とは別に、入院基本料自体も直接引き上げられています。主な変更は以下のとおりです。

入院料区分 改定前(令和6年度) 改定後(令和8年度) 増加点数
急性期一般入院料1(→急性期1) 1,688点 1,874点 +186点
急性期病院A一般入院料(新設) 1,930点 新設
地域一般入院料1 1,176点 1,290点 +114点
特別入院基本料 612点 704点 +92点
回復期リハビリテーション病棟入院料1 1,964点 2,035点 +71点

入院基本料の引き上げは毎日算定される点数であるため、収益への影響は大きくなります。急性期1では+186点/日、年間入院患者1床あたり換算で約67,890点(約68万円)の増収効果です(365日稼働・換算)。

7. 食費・光熱水費の改定

項目 改定前 改定後 変化
入院時食事療養費(1食あたり) 690円 730円 +40円/食
光熱水費(1日あたり) +60円 引き上げ
患者負担への影響

食費・光熱水費の一部は患者負担(標準負担額)に反映されます。患者への説明や窓口での案内を整備しておきましょう。低所得者等の減額認定証所持者は別途負担額が定められていますので、これについても確認が必要です。

8. 令和9年6月以降の段階的引き上げ

1

令和8年6月〜令和9年5月(第1段階)

物価対応料の初期点数で算定開始。入院物価対応料は区分ごとに13〜66点/日。外来・在宅は初診・再診各2点、訪問3点。

2

令和9年6月〜(第2段階)

物価対応料が所定点数の200%(2倍)へ引き上げ。入院物価対応料は最大132点/日(急性期病院A)に。ただし令和9年度予算編成において再調整が行われる可能性があります。

令和9年6月を見据えた準備を

2倍への引き上げは確定ではなく「令和9年度予算編成での再調整」の余地が残されています。厚生労働省の動向を注視しつつ、システム更新のスケジュール管理を行ってください。

9. 実務対応チェックリスト

レセプトシステム・電子カルテに物価対応料(外来・在宅・入院)の点数マスタ更新を依頼した
自院の入院料区分に対応する入院物価対応料の点数(13〜66点/日)を確認した
外来・在宅の物価対応料(初診2点・再診2点・訪問3点)が正しく自動算定される設定になっているか確認した
歯科の場合、歯科外来物価対応料(初診3点・再診1点)の設定を確認した
入院時食事療養費(730円/食)・光熱水費(+60円/日)の変更を患者向け案内文・掲示物に反映した
低所得者等の標準負担額減額の取り扱いを確認した
改定後の入院基本料点数(急性期1:1,874点 等)で月次収支シミュレーションを更新した
令和9年6月以降の2倍引き上げを見越して次年度の収益予測を作成した
事務スタッフへの算定ルール周知・研修を実施した

10. よくある質問(FAQ)

Q物価対応料の算定に届出は必要ですか?
A不要です。基本診療料を算定している医療機関であれば、特別な施設基準の届出なしに算定できます。ただしレセプトシステムへの設定反映は各医療機関の責任で行う必要があります。

Q外来患者が同日に初診と再診の両方を受けた場合、物価対応料はどう算定しますか?
A外来・在宅物価対応料は「1日1回」の算定です。初診料と再診料が同時に算定されることは通常ありませんが、同日に複数の算定が発生する場合は初診時の点数(2点)を1回のみ算定します。

Q入院物価対応料は特定入院料(ICU等)にも算定できますか?
Aはい。第1章第2部第3節の特定入院料(特定集中治療室管理料・HCU管理料等)を算定している患者についても、当該区分に対応した入院物価対応料を算定できます。算定点数は区分によって異なりますので、自院の届出区分をご確認ください。

Q令和9年6月以降の2倍引き上げは確定事項ですか?
A現在の改定内容では「令和9年6月以降は所定点数の200%」と定められていますが、令和9年度の予算編成の際に再調整が行われる可能性が示されています。確定情報は厚生労働省の告示・通知で随時確認してください。

Q訪問診療の物価対応料(3点)は、同一日に複数の患者を訪問した場合、患者ごとに算定できますか?
Aはい、患者ごとに1日1回算定できます。訪問診療料を算定する患者1人につき3点(令和9年6月以降6点)の算定となります。

本記事は2026年5月時点の診療報酬改定情報をもとに作成しています。物価対応料の算定要件・点数の詳細は厚生労働省の告示・通知を必ずご確認ください。個別の算定可否や経営シミュレーションについては、所轄の地方厚生(支)局または医療専門の税理士・コンサルタントにご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました