令和8年度診療報酬改定では、地域包括医療病棟入院料について、従来の一律評価から、急性期病棟の併設状況、入院形態、手術の有無に応じた評価へ見直されます。医事課、病棟管理者、リハビリ・栄養・口腔管理の担当者は、点数だけでなく、病院内の病棟構成、救急受入実績、平均在院日数、ADL低下割合、重症度・医療・看護必要度の基準をあわせて確認しておく必要があります。
参考資料:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」関連資料(地域包括医療病棟入院料の見直し、3~5ページ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001673287.pdf
この記事でわかること
- 地域包括医療病棟入院料がどのように区分化されるか
- 入院料1~3の考え方と、緊急入院・予定入院・手術の関係
- 施設基準で見直される平均在院日数、ADL、必要度、救急搬送後患者割合
- リハビリテーション・栄養・口腔連携加算の見直し
- 届出前に医療機関が準備しておきたい資料と確認事項
① 見直しの全体像
今回の見直しのポイントは、地域包括医療病棟が担う患者像に応じて、評価をより細かくすることです。資料では、誤嚥性肺炎や尿路感染症など、地域包括医療病棟で診療を担うことが期待される患者の医療資源投入量や特徴を踏まえ、入院形態と手術の実施状況に応じて点数を分ける考え方が示されています。
また、包括期の病棟のみで救急受入等を担う医療機関の負担を考慮し、同一病院内にA100一般病棟入院基本料を算定する病棟がない場合は、より高い評価となる地域包括医療病棟入院料1を届け出る整理です。
② 点数の見直し
| 区分 | 入院料1 | 入院料2 | 入院料3 | 考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 地域包括医療病棟入院料1 | 3,367点 | 3,267点 | 3,117点 | 同一病院内にA100一般病棟入院基本料算定病棟がない場合 |
| 地域包括医療病棟入院料2 | 3,316点 | 3,216点 | 3,066点 | 同一病院内にA100一般病棟入院基本料算定病棟がある場合 |
| 現行 | 3,050点 | 1日につき一律評価 | ||
点数は、従来の3,050点から、病院機能と患者区分に応じた複数区分へ変わります。医療機関としては、まず自院が「入院料1」なのか「入院料2」なのかを、A100一般病棟入院基本料算定病棟の有無で確認します。そのうえで、患者ごとに入院料1~3を判定する運用になります。
③ 患者ごとの入院料1~3の判定
| 患者区分 | 算定する入院料 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 緊急入院で、主傷病に対して手術を行わない患者 | 入院料1 | 緊急入院であること、主傷病に対して手術を行っていないことを診療録・DPC情報・医事情報で確認 |
| 入院料1にも入院料3にも該当しない患者 | 入院料2 | 予定入院か緊急入院か、主傷病に対する手術の有無を確認し、どちらにも該当しない場合に整理 |
| 予定入院で、主傷病に対して手術を行う患者 | 入院料3 | 予定入院であること、主傷病に対する手術が医科点数表第2章第10部第1節の手術に該当することを確認 |
判定で迷いやすいのは、手術の有無だけでなく「主傷病に対して行った手術か」という点です。医事課だけで判断せず、診療情報管理部門や主治医、手術室部門と、主傷病・入院目的・手術情報の確認ルールを決めておくと運用が安定します。
④ 90日超入院の扱い
資料では、90日を超えて入院する患者については、A100一般病棟入院基本料の地域一般入院料3の例により算定する整理が示されています。長期入院が一定数見込まれる医療機関では、入棟日、算定開始日、90日到達日の管理を、病棟・医事課の双方で確認できるようにしておきましょう。
⑤ 施設基準の見直し
施設基準では、高齢者の中等症までの救急疾患等の幅広い受入を推進する観点から、平均在院日数、ADL低下割合、重症度・医療・看護必要度などが見直されます。変更のない項目もありますが、届出前には現行の院内データで改定後基準を満たせるかを再計算しておく必要があります。
| 項目 | 改定後の主な内容 | 院内で確認する資料の例 |
|---|---|---|
| 看護職員配置 | 10対1。7割以上が看護師 | 勤務表、配置表、看護職員名簿 |
| 多職種配置 | 常勤のPT・OT・STが専従1名、専任1名。常勤管理栄養士が専任1名 | 辞令、勤務表、職種別配置表 |
| 重症度、医療・看護必要度の基準 | A2点以上、C1点以上など。基準該当患者割合に係る指数として必要度I 16%、必要度II 15% | 必要度集計、救急搬送応需係数、月次実績 |
| 初日のB項目 | 初日のB項目が3点以上の患者割合が5割以上 | 入棟初日評価、看護必要度記録 |
| 平均在院日数 | 原則20日。85歳以上の患者割合が2割増すごとに1日加算 | 退院患者一覧、年齢別入院実績、平均在院日数集計 |
| ADL低下割合 | 7%未満。ただし85歳以上の患者割合が2割未満の場合は5%未満 | ADL評価、入退棟時評価、リハビリ記録 |
| 救急搬送後患者割合 | 15%以上 | 救急搬送受入台帳、救急外来記録、入院経路データ |
⑥ 急性期病棟の有無で届出区分が変わる
改定後は、同一病院内にA100一般病棟入院基本料を算定する病棟があるかどうかで、医療機関ごとに届け出る区分が分かれます。地域包括医療病棟入院料1はA100算定病棟なし、地域包括医療病棟入院料2はA100算定病棟ありです。
| 届出区分 | A100一般病棟入院基本料算定病棟 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 地域包括医療病棟入院料1 | なし | 包括期病棟のみで救急受入等を担う体制として評価。病棟構成と届出状況を確認 |
| 地域包括医療病棟入院料2 | あり | 急性期病棟併設ありとして評価。A100算定病棟の届出状況と同一病院内の範囲を確認 |
⑦ 届出・併設等の制限にも注意
資料では、地域包括医療病棟1・2の別に、急性期充実体制加算、急性期総合体制加算、特定機能病院、一般病棟入院基本料、急性期病院A・B入院料、専門病院入院基本料などとの関係が示されています。経過措置がある項目も含まれるため、該当する医療機関は、最終的な告示・通知・疑義解釈と地方厚生局への届出様式で確認が必要です。
⑧ リハビリテーション・栄養・口腔連携加算の見直し
地域包括医療病棟におけるリハビリテーション・栄養・口腔連携加算も見直されます。現行80点の評価から、加算1は110点へ引き上げ、施設基準を緩和した加算2が50点で新設される整理です。
| 区分 | 点数 | 主な施設基準の考え方 |
|---|---|---|
| リハビリテーション・栄養・口腔連携加算1 | 110点 | 現行より評価を引き上げ。プロセス・アウトカム評価は資料上「不変」と整理 |
| リハビリテーション・栄養・口腔連携加算2 | 50点 | 施設基準を緩和した新設区分。入棟後3日までのリハ開始8割以上、休日提供単位数は平日の7割以上、退院時ADL低下5%未満、院内発生褥瘡2.5%未満など |
| 現行 | 80点 | 1区分で評価 |
加算2は緩和区分ですが、入棟後早期のリハ開始、休日リハ提供、ADL低下、褥瘡発生割合といった実績管理は引き続き重要です。リハビリ部門、栄養部門、歯科・口腔管理担当、看護部門が同じ指標を見て、月次で未達リスクを確認する体制が望まれます。
⑨ 医療機関が準備しておきたいこと
| 準備事項 | 確認する内容 | 担当部署の例 |
|---|---|---|
| 病棟構成の確認 | A100一般病棟入院基本料算定病棟の有無、急性期関連加算・入院料との関係 | 事務長、医事課、施設基準担当 |
| 患者区分判定ルール | 緊急入院、予定入院、主傷病に対する手術の有無をどのデータで判定するか | 医事課、診療情報管理、診療部 |
| 必要度・救急搬送データ | 必要度I・II、救急搬送後患者割合、救急搬送応需係数の集計 | 看護部、医事課、救急外来 |
| 平均在院日数と年齢構成 | 85歳以上患者割合に応じた平均在院日数基準の確認 | 医事課、診療情報管理 |
| ADL低下割合 | 入退棟時評価の入力状況、ADL低下患者の割合 | 病棟、リハビリ部門、看護部 |
| 多職種配置 | PT・OT・ST、管理栄養士の常勤・専従・専任要件 | 人事、リハビリ部門、栄養部門 |
| 連携加算の実績管理 | 入棟後3日以内リハ開始、休日提供単位、ADL低下、褥瘡割合 | リハビリ、栄養、看護、口腔管理担当 |
⑩ 届出前チェックリスト
- A100一般病棟入院基本料算定病棟の有無を確認した
- 地域包括医療病棟入院料1・2のどちらに該当するか整理した
- 患者ごとの入院料1~3の判定フローを作成した
- 緊急入院・予定入院の定義と入力ルールを院内で統一した
- 主傷病に対する手術かどうかを確認する運用を決めた
- 90日超入院患者の管理方法を確認した
- 必要度I・II、救急搬送後患者割合、平均在院日数、ADL低下割合を改定後基準で試算した
- PT・OT・ST、管理栄養士の配置要件を勤務表で確認した
- リハビリテーション・栄養・口腔連携加算1・2のどちらを目指すか検討した
- 経過措置や届出不可・併設制限に該当する可能性を確認した
FAQ
Q1. すべての患者で同じ点数を算定する運用ではなくなりますか。
はい。改定後は、医療機関ごとの地域包括医療病棟入院料1・2に加え、患者ごとの入院料1~3を判定する整理です。患者単位の入院形態と手術の有無を確認する運用が必要です。
Q2. 手術をしていれば必ず入院料3ですか。
資料上、入院料3は「予定入院で、主傷病に対して手術を行うもの」とされています。単に手術があるだけでなく、予定入院であること、主傷病に対する手術であることを確認しましょう。
Q3. 施設基準は点数表だけ見れば十分ですか。
十分ではありません。平均在院日数、85歳以上患者割合、ADL低下割合、必要度、救急搬送後患者割合、多職種配置など、複数の実績・体制要件を同時に確認する必要があります。最終的な届出では告示・通知・疑義解釈・地方厚生局資料の確認が必要です。
Q4. リハビリテーション・栄養・口腔連携加算はどう変わりますか。
加算1は110点へ評価が引き上げられ、施設基準を緩和した加算2が50点で新設されます。加算2でも、入棟後早期のリハ開始、休日リハ提供、ADL低下、褥瘡割合の管理は必要です。
今回の見直しは、単なる点数増減ではなく、地域包括医療病棟が救急・高齢患者・多職種連携をどのように担うかを、より実績に近い形で評価する変更です。届出前には、施設基準担当だけでなく、医事課、看護部、リハビリ部門、栄養部門、診療情報管理部門が同じデータを見ながら、判定ルールと月次モニタリングを整えておくと安心です。


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