【2026年診療報酬改定】外来医療の機能分化・強化の変更点を解説|紹介患者受入加算新設・機能強化加算の要件厳格化・かかりつけ医機能報告制度

【2026年診療報酬改定】外来医療の機能分化・強化の変更点を解説
紹介患者受入加算新設・機能強化加算の要件厳格化・かかりつけ医機能報告制度

大病院から地域クリニックへの逆紹介を促す「紹介患者受入加算60点」が新設。機能強化加算80点の要件厳格化とかかりつけ医機能報告制度の本格運用が外来診療を変える

令和8年度診療報酬改定
外来医療機能分化
紹介患者受入加算
機能強化加算
かかりつけ医
開業医・クリニック向け

「うちのクリニックは機能強化加算を引き続き算定できる?」「大病院から逆紹介された患者を受け入れると何か加算が取れる?」「かかりつけ医機能報告制度が始まって診療報酬はどう変わった?」令和8年(2026年)度診療報酬改定では、外来医療の機能分化がさらに加速します。

開業医・クリニックにとって最も注目すべきは2点です。まず、特定機能病院などから逆紹介された患者をクリニックが受け入れた際に算定できる「特定機能病院等紹介患者受入加算(60点)」が新設されます。次に、かかりつけ医機能の評価加算である「機能強化加算(80点)」の施設基準が厳格化され、BCP(事業継続計画)策定が要件に加わります。

この記事では外来医療の機能分化に関する改定ポイントを、開業医・クリニック事務・病院経営者向けにわかりやすく整理します。

① 外来機能分化の方向性

日本の外来医療は「大病院志向」が続いており、軽症患者が特定機能病院・大規模病院に集中する一方、地域のかかりつけ医機能が十分に活かされていない状況が続いています。令和8年改定では「大病院は専門・紹介患者に集中し、日常の外来はかかりつけ医が担う」という役割分担をさらに促進する仕組みが強化されます。

改定の主な方向性 具体的な施策
逆紹介(下り紹介)の促進 紹介患者受入加算の新設でクリニックへの受け入れを誘導
かかりつけ医機能の強化 機能強化加算の要件厳格化・かかりつけ医機能報告制度との連動
大病院への患者集中の抑制 紹介状なし受診の選定療養費維持・強化
時間外対応の評価向上 時間外対応体制加算への改称と点数引き上げ

② 特定機能病院等紹介患者受入加算(新設・60点)

令和8年改定の目玉のひとつが、「特定機能病院等紹介患者受入加算(60点)」の新設です。大病院から逆紹介された患者を地域のクリニック・中小病院が初診で受け入れた際に算定できます。

算定要件

要件 内容
算定できる医療機関 200床未満の病院または診療所(クリニック)
紹介元となる医療機関 特定機能病院、地域医療支援病院(200床以上)、紹介受診重点医療機関(200床以上)、400床以上の病院
算定のタイミング 上記の医療機関から紹介された患者の初診時(1回)
点数 60点(初診料に加算)
💡 逆紹介を積極的に受けることで増収につながる

大病院で治療が一段落した患者を積極的に受け入れることで、1回あたり60点(600円)を初診料に上乗せできます。地域の大病院・支援病院と連携関係を構築し、逆紹介の窓口として積極的にPRすることが増収戦略の一つになります。

「逆紹介」とは何か
大病院での専門的治療が終わり、引き続きの管理・療養を地域のかかりつけ医が担うために、大病院から地域の診療所・中小病院への紹介を「逆紹介(下り紹介)」と呼びます。今回の加算は逆紹介を受け入れる側(クリニック・中小病院)にインセンティブを付与することで、患者の大病院集中を緩和しようとするものです。

③ 機能強化加算の要件厳格化(80点)

かかりつけ医機能を評価する「機能強化加算(80点)」は引き続き算定できますが、令和8年改定で施設基準が厳格化されます。

機能強化加算の概要

項目 内容
対象医療機関 200床未満の病院または診療所(クリニック)
点数 80点(初診料に加算)
算定タイミング 初診時(1回)

新たに加わった要件

追加要件 内容
BCP(事業継続計画)の策定 災害・感染症発生時における診療継続のための計画を2026年3月31日までに策定済みであること
かかりつけ医機能報告制度への対応 かかりつけ医機能報告制度(2025年4月開始)に基づく報告を適切に行っていること
多剤処方対応 ポリファーマシー(多剤処方)対策を実施している医療機関への評価強化
⚠ BCP未策定のクリニックは機能強化加算を算定できなくなる

BCP(事業継続計画)の策定が施設基準の要件となりました。2026年3月31日までに策定していない場合は、6月1日以降に機能強化加算80点を算定できなくなります。まだ策定していないクリニックは厚生労働省・医師会の提供するBCPひな形を活用して早急に対応してください。

④ かかりつけ医機能報告制度と診療報酬

2025年4月に開始された「かかりつけ医機能報告制度」が、令和8年改定の診療報酬と連動します。2026年1月から医療機関の本格的な報告が開始されており、その内容が地域包括診療加算・地域包括診療料などの算定要件に反映されます。

制度・加算 令和8年改定での変更点
地域包括診療加算・地域包括診療料 対象患者の要件・算定要件が見直し。生活習慣病以外の患者にも適用範囲が拡大
機能強化加算 かかりつけ医機能報告制度との連動で要件厳格化(上記③参照)
時間外対応体制加算 時間外・夜間の対応体制が整っている医療機関への評価が引き上げ(下記⑤参照)
かかりつけ医機能報告制度とは
慢性疾患を持つ患者の継続的な管理、時間外対応、在宅医療対応、専門医への紹介機能など「かかりつけ医としての機能」を都道府県に報告する制度です。2025年4月から義務化されており、報告内容は公表されて患者が「かかりつけ医」を選ぶ際の参考情報になります。

⑤ 時間外対応体制加算への名称変更・点数引き上げ

「時間外対応加算」が「時間外対応体制加算」に名称変更され、点数が引き上げられます。夜間・休日に患者からの電話相談に対応できる体制を整えている診療所への評価が高まります。

区分 現行 改定後(参考) 主な要件
時間外対応体制加算1(最上位) 引き上げ 24時間自院または連携で対応可能
時間外対応体制加算2 引き上げ 準夜帯まで対応(または複数診療所で分担)
時間外対応体制加算3 引き上げ 電話相談への対応体制のみ
💡 複数クリニックで輪番体制を組むことで上位区分を算定できる

近隣のクリニック同士で夜間の電話対応を輪番制にすることで、単独では対応が難しい上位区分の算定が可能になります。地区医師会を通じた連携体制の整備が増収のカギです。

⑥ 大病院の紹介状なし受診と選定療養費

大病院への患者集中を抑制するため、紹介状なしで大病院を受診した際の患者自己負担(選定療養費)は引き続き維持されます。

受診の種別 患者自己負担(選定療養費) 対象医療機関
紹介状なしの初診 7,000円以上(税込) 特定機能病院・地域医療支援病院(200床以上)・紹介受診重点医療機関(200床以上)
紹介状なしの再診(逆紹介後も継続受診) 3,000円以上(税込) 同上
患者への説明ポイントとして、「大病院での治療が一段落したら地域のかかりつけ医に戻ることで、選定療養費(追加負担)がなくなり、医療費が安くなる」ことを丁寧に伝えることが、逆紹介をスムーズに進める上で重要です。

⑦ 外来感染対策向上加算(継続・6点)

感染対策を継続的に実施している診療所・クリニックへの評価として、「外来感染対策向上加算(6点)」は令和8年改定でも維持されます。初診・再診時に月1回算定できます。

項目 内容
点数 6点(月1回)
対象 診療所・クリニック
主な要件 感染防止対策部門の設置・院内感染対策マニュアルの整備・スタッフ研修の実施等

⑧ 対応ロードマップ

1

BCP(事業継続計画)の策定・確認(至急)

機能強化加算を算定しているクリニックは、BCPの策定が完了しているか確認する。未策定の場合は日本医師会・都道府県医師会のBCPひな形を活用して早急に作成する。BCPは2026年3月31日までに策定している必要がある。

2

機能強化加算の新要件確認と届出(〜2026年5月18日)

機能強化加算の施設基準(BCP策定・かかりつけ医機能報告・多剤処方対応等)を満たしているか確認し、要件を満たしている場合は6月1日施行に合わせた届出(5月18日まで推奨)を行う。

3

特定機能病院等紹介患者受入加算の算定体制整備(〜2026年6月)

地域の特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関と連携し、逆紹介の受け入れ体制をPRする。受入加算(60点)を確実に算定できるよう、レセプトコンピュータの設定をベンダーに確認する。

4

時間外対応体制加算の区分確認と届出(〜2026年5月)

現在の時間外対応体制がどの区分に該当するか確認する。より上位の区分を目指す場合は、近隣クリニックとの輪番体制構築を地区医師会に相談する。

5

かかりつけ医機能報告の内容確認(〜2026年6月)

2026年1月から開始した本格報告の内容が、地域包括診療加算・地域包括診療料の算定要件と整合しているか確認する。報告内容と実際の診療体制に乖離がないよう管理する。

⑨ よくある質問

Q特定機能病院等紹介患者受入加算は、紹介状があれば何でも算定できますか?
A紹介状の発行元が特定機能病院・地域医療支援病院(200床以上)・紹介受診重点医療機関(200床以上)・400床以上の病院である必要があります。地域の一般クリニックからの紹介状では算定できません。また算定できるのは初診時のみです。

QBCPをまだ策定していません。簡単に作れるひな形はありますか?
A日本医師会・厚生労働省・各都道府県医師会がクリニック向けのBCPひな形を提供しています。「診療所 BCP ひな形」で検索するとダウンロードできます。感染症発生時・大規模災害時それぞれの対応手順、スタッフ連絡体制、設備バックアップ方法を記載したA4数枚程度のシンプルな形式で作成可能です。

Q機能強化加算(80点)と特定機能病院等紹介患者受入加算(60点)は同時に算定できますか?
A算定条件を両方満たす場合、同一初診時に重複して算定できるかどうかは告示・通知の規定によるため、最新の厚生労働省通知で確認してください。一般的に初診加算は複数同時算定の可否が細かく規定されています。

Q200床以上の一般病院は機能強化加算を算定できませんか?
A機能強化加算は「200床未満の病院または診療所」が対象です。200床以上の病院は算定できません。ただし200床以上の病院でも別の初診加算(選定療養の特別の料金等)が適用される場合がありますので、自院の規模に応じた確認が必要です。

Q「かかりつけ医機能報告制度」への報告は義務ですか?報告しないと罰則はありますか?
Aかかりつけ医機能報告制度は医療機関への報告義務が定められています。ただし報告未実施の場合の罰則規定については各医療法の規定によります。加えて報告を適切に行っていることが機能強化加算等の施設基準要件に連動しているため、未報告の場合は加算算定に影響する可能性があります。所管の都道府県・地方厚生局に確認してください。

⑩ まとめチェックリスト

BCP(事業継続計画)を2026年3月31日までに策定済みか確認した(機能強化加算の要件)
機能強化加算(80点)の新施設基準(BCP・多剤処方対応等)を満たしているか確認し、届出準備を行った
地域の特定機能病院・地域医療支援病院等との連携関係を確認し、逆紹介患者の受入体制をPRした
特定機能病院等紹介患者受入加算(60点)をレセコンで確実に算定できるよう設定を確認した
時間外対応体制加算の区分を確認し、上位区分を目指す場合は近隣クリニックとの連携を検討した
かかりつけ医機能報告制度の報告内容と診療体制が整合しているか確認した
外来感染対策向上加算(6点)の算定継続要件(感染対策マニュアル・研修等)を確認した

【免責事項】
本記事は2026年4月時点の厚生労働省資料および公表情報をもとに作成しています。診療報酬の算定ルールは告示・通知の内容が最終的な根拠となります。施設基準の届出・算定にあたっては必ず最新の厚生労働省通知・保険請求の手引きをご確認ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても責任を負いかねます。

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