【2026年診療報酬改定】救急医療・小児周産期医療の変更点とは?
新設・引き上げされた管理料・加算を病院管理者・開業医向けに解説
救急外来医学管理料の新設、NICU点数の大幅引き上げ、産科管理加算の新設など、救急・小児・周産期領域の全変更点を整理。
2026年(令和8年)6月の診療報酬改定では、救急医療・小児医療・周産期医療が重点的に評価される分野として位置づけられ、多くの新設・引き上げが行われました。救急搬送患者だけでなくウォークイン患者への対応も評価対象となり、NICU点数の大幅増額、産科管理加算の新設など、現場に直結する変更が多数含まれています。
この記事では、「救急医療でどんな評価が新設されたか」「NICU・産科の点数はどう変わったか」「算定要件は何か」の3点を、病院管理者・開業医・医療事務担当者向けにわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
① 改定の全体像・背景
救急医療・小児周産期医療は、採算がとりにくい一方で地域医療に不可欠な機能として、今改定で手厚く評価されました。背景には以下の課題があります。
- 救急医療の二次・三次機能の維持(受入医療機関の確保)
- ウォークイン救急患者の増加と夜間・休日の対応体制強化
- 少子化対策の一環としての産科・周産期医療の充実
- NICUの集約化と高機能化による周産期救命率の向上
- 小児専門医療機能の確保と地域小児科との役割分担
② 救急外来医学管理料(新設)
今改定の目玉の一つが、救急外来医学管理料の新設です。従来の「夜間休日救急搬送医学管理料」を再編・拡充し、救急搬送患者だけでなくウォークインで受診した救急患者への対応も評価対象としました。
救急搬送医学管理料(救急車搬送患者対象)
| 区分 | 年間救急搬送受入件数 | 点数(概要) |
|---|---|---|
| 救急搬送医学管理料1 | 年間1,500件以上 | 高い評価点数(詳細は告示参照) |
| 救急搬送医学管理料2 | 年間800件以上 | 上記より低い評価点数 |
夜間休日救急医学管理加算(ウォークイン等患者対象)
夜間・休日に救急外来を受診したウォークイン患者(救急車以外)への対応も新たに評価対象となりました。救急対応体制の整備実績に応じた区分が設定されています。
旧「夜間休日救急搬送医学管理料」は、救急車で搬送されてきた患者のみが対象でした。今改定では夜間・休日に自ら来院した患者への対応も評価されるようになり、救急外来の体制・機能全体に対する包括的な評価体系に改められました。
主な算定要件
| 要件区分 | 内容 |
|---|---|
| 体制要件 | 救急医療を24時間提供できる体制を整備していること(二次救急病院または救命救急センター等) |
| 人員要件 | 救急担当医師の配置、救急対応可能な看護師の確保 |
| 実績要件 | 年間の救急搬送受入件数(区分1は1,500件以上、区分2は800件以上) |
| 情報提供要件 | 救急患者に関する診療情報を他の医療機関と共有する体制 |
救急外来医学管理料は施設基準の届出が必要です。令和8年6月の施行に向けて、要件を満たすか確認し、早めに届出準備を進めてください。
③ 救急搬送長時間加算(新設)
救急患者の搬送に医師・看護師・救急救命士が同乗した場合の評価として、搬送時間が30分を超える場合に長時間加算(700点)が上乗せされるようになりました。
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| 基本(同乗搬送) | 医師・看護師・救急救命士が同乗して搬送した場合 | 既存の点数 |
| 長時間加算(新設) | 上記搬送の時間が30分を超えた場合の上乗せ | 700点 |
高次救急病院から地域密着型病院への「下り搬送」(状態が安定した患者を適切な医療機関へ移送する取り組み)も評価の対象です。高次救急と地域病院の双方で評価することで、救急患者の効率的な流れを促進します。
④ ICU施設基準の見直し
特定集中治療室(ICU)の施設基準に、救急搬送件数または全身麻酔手術件数の実績要件が新たに導入されました。
| 施設区分 | 要件(いずれか一方を満たすこと) |
|---|---|
| 一般病院(ICU) | 年間救急搬送件数1,000件以上 または年間全身麻酔手術件数1,000件以上 |
| 医療資源の少ない地域 | 年間救急搬送件数800件以上 または年間全身麻酔手術件数800件以上 |
| 小児病院 | 年間全身麻酔手術件数500件以上(医療資源少ない地域は400件以上) |
⑤ NICU・MFICU点数の大幅引き上げ
新生児特定集中治療室(NICU)および母体・胎児集中治療室(MFICU)の管理料が大幅に引き上げられました。
新生児特定集中治療室管理料(NICU)
| 区分 | 改定前 | 改定後 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 管理料1 | 10,584点 | 10,931点 | +347点 |
| 管理料2 | 8,472点 | 8,790点 | +318点 |
NICU管理料2の算定には診療実績にかかる基準として、以下のいずれかを満たすことが必要です。
① 出生体重2,500g未満の新生児の新規入院患者数が年間30件以上
② 総合周産期母子医療センターまたは地域周産期母子医療センターの指定を受けており、出生体重2,500g未満の新生児の新規入院患者数が年間25件以上
母体・胎児集中治療室管理料(MFICU)の見直し
母体・胎児集中治療室管理料(MFICU)については、医師配置要件の緩和と実績要件の新設という2方向の見直しが行われました。これによりMFICUの集約化を促進し、より高度な周産期救命機能を確保する方向性が示されています。
| 変更項目 | 変更内容 |
|---|---|
| 医師配置要件 | 現行要件から一定の緩和(詳細は施設基準告示参照) |
| 実績要件 | 新設(MFICUとしての一定の診療実績を求める) |
| 目的 | MFICUの機能集約・高度化による周産期救命率の向上 |
⑥ 産科管理加算(新設)
「母子の心身の安定・安全に配慮した産科管理」を評価する産科管理加算が新設されました。1日につき算定するもので、病院と有床診療所で点数が異なります。
| 施設区分 | 点数(1日につき) |
|---|---|
| 病院 | 250点 |
| 有床診療所 | 50点 |
算定要件(施設基準)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 標榜科・分娩取り扱い | 産科または産婦人科を標榜し、分娩(出産)を取り扱っていること |
| 療養環境 | 母子の心身の安定・安全の確保ができる十分な療養環境を整備していること |
| 専任助産師の配置 | 母子保健および福祉に関する事業等との地域連携に係る業務に十分な経験を有する専任の助産師を配置していること |
| 地域連携体制 | 妊娠・産後を含む継続ケアを行う体制を整備し、地域との連携が図られていること |
産科・産婦人科を標榜する有床診療所でも、要件を満たせば産科管理加算(50点)を算定できます。地域の産科診療所における助産師配置や連携体制の整備を後押しする内容です。
⑦ 小児医療の評価強化
小児病棟での遺伝子パネル検査の出来高算定
小児病棟等において、白血病等の遺伝子パネル検査を出来高算定できるようになりました。従来は包括評価(入院料に含まれる)とされていた検査が、小児の特性に応じて出来高での評価が認められたものです。
急性期総合体制加算における小児・周産期機能の評価
急性期病院の機能評価として設けられた「急性期総合体制加算」では、小児医療・周産期医療の機能を持つ病院が評価される仕組みが組み込まれています。地域に不可欠でありながら採算がとりにくい機能を維持することへの評価です。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 小児医療機能 | 小児科の標榜・小児患者の受入実績・小児救急への対応 |
| 周産期医療機能 | 産科・産婦人科の標榜・分娩取り扱い・周産期母子医療センターの指定 |
| 総合的な急性期機能 | 救急・外科・内科等の複合機能を持つ急性期病院の評価 |
⑧ 注意事項・よくある間違い
従来の「夜間休日救急搬送医学管理料」は今改定で廃止・再編されています。旧加算の届出のままでは新体系での算定ができません。施設基準の再確認・再届出が必要です。
ICUの施設基準に新設された実績要件(救急搬送件数または全身麻酔手術件数)は、新規届出施設だけでなく既存の届出施設にも適用されます。要件を満たしているか確認し、必要であれば体制整備を進めてください。
産科管理加算の算定には「母子保健および福祉に関する事業等との地域連携に係る業務に十分な経験を有する専任の助産師」の配置が求められます。産科・産婦人科に助産師は配置していても、「専任」「経験要件」を満たすか確認が必要です。
救急搬送長時間加算(700点)の「30分超」は、同乗搬送の開始から到着までの搬送時間が対象です。院内での処置時間や待機時間は含まれません。搬送記録の適切な管理が算定の根拠となります。
⑨ よくある質問
⑩ まとめチェックリスト
本記事は2026年4月時点の情報(厚生労働省公表資料・答申・告示・通知等)をもとに作成しています。診療報酬の算定要件・点数は改定後に公表される告示・通知が正式情報です。算定にあたっては必ず最新の通知・施設基準をご確認ください。また、個別の算定可否については担当の地方厚生局または専門家にご相談ください。

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