【2026年診療報酬改定】DPC/PDPSの変更点を徹底解説
標準病院群2区分化・入院期間II見直し・係数改定の対応ポイント
DPC標準病院群が救急実績に応じ2区分に。基礎係数の差(1.0583 vs 1.0283)が病院収益を左右。5つの見直しポイントを病院経営者向けに解説
「うちの病院はDPC標準病院群1と2のどちらになる?」「入院期間IIが中央値に変わると何が変わる?」「複雑性係数の見直しで収益はどう変わる?」令和8年(2026年)度診療報酬改定では、DPC/PDPSの評価体系が5つの観点から大きく見直されます。
最大のポイントは「DPC標準病院群の2区分化」です。救急搬送実績などに応じて標準病院群1(基礎係数1.0583)と標準病院群2(基礎係数1.0283)に分かれ、その差0.03は診療報酬全体に乗じられるため、病院収益に直結します。あわせて入院期間IIの「中央値」への移行、複雑性係数の見直し、地域医療係数の疾患領域別評価導入、再転棟ルールの変更と、5つの改定が同時に実施されます。
この記事では各変更点の内容・自院への影響・対応策をわかりやすく整理します。
📋 この記事でわかること
① DPC/PDPSの基本的なしくみ(おさらい)
DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)は、急性期病院における入院医療費の包括払い制度です。患者の診断群分類(DPC)に応じた1日あたりの包括点数に、病院ごとの「医療機関別係数」を乗じて報酬が決まります。
医療機関別係数 = 基礎係数(病院群ごとに設定)+ 機能評価係数Ⅱ(各病院の実績に応じた加算)+ 激変緩和係数
DPCの報酬 = 包括点数(診断群分類×入院日数段階)× 医療機関別係数 × 10円
令和8年改定ではこの「医療機関別係数」を構成する基礎係数と機能評価係数Ⅱの両方が見直されます。また診断群分類(DPC)の設定基準となる「入院期間II」の算出方法も変わります。
② 標準病院群の2区分化と基礎係数
これまでDPCの医療機関群は「大学病院本院群」「DPC特定病院群」「DPC標準病院群」の3段階でしたが、令和8年改定で「DPC標準病院群」がさらに2つ(標準病院群1・2)に細分化されます。
基礎係数の比較
| 医療機関群 | 基礎係数 | 対象 |
|---|---|---|
| 大学病院本院群 | 1.1305(参考) | 大学病院本院 |
| DPC特定病院群 | 1.0676(参考) | 高度な急性期機能を持つ病院 |
| DPC標準病院群1(新設) | 1.0583 | 救急実績等の要件を満たす標準病院 |
| DPC標準病院群2(新設) | 1.0283 | 上記要件を満たさない標準病院 |
標準病院群1の要件(いずれか1つを満たせばよい)
| パターン | 要件 |
|---|---|
| パターン① | 救急車等による搬送入院患者数が年間700人以上 |
| パターン② | 救急搬送入院 200人以上 かつ 全身麻酔手術 500件以上 |
| パターン③ | 人口20万人以下の二次医療圏で圏内最大 かつ 救急搬送入院 400人以上 |
| パターン④ | 離島のみの二次医療圏に所在し、当該医療圏内で救急搬送が最大規模 |
標準病院群1と2の基礎係数の差は0.03(3%分)です。たとえば1日あたりのDPC包括点数が平均2,000点、平均在院患者が100人の病院では、年間で約2,190万円(2,000点×10円×0.03×100人×365日)の収入差となります。自院が標準病院群1の要件を満たすか必ず確認してください。
③ 入院期間IIの「中央値」への移行
DPCの包括点数は入院日数に応じて3段階(入院期間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)で設定されており、入院期間Ⅱまでが比較的高い点数、Ⅲ以降は低い点数になります。これまで入院期間Ⅱの区切りは「平均在院日数」でしたが、令和8年改定では対象の診断群分類について「在院日数の中央値」に変更されます。
| 変更点 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 入院期間IIの設定基準 | 平均在院日数 | 在院日数の中央値 |
| 対象診断群分類 | — | 変動係数が0.6未満の診断群分類 |
| 変動率の上限 | — | ±10%(急激な変化を防ぐ経過措置) |
多くの診断群分類で、実際の在院日数の分布は右に偏っており(一部の長期入院患者が平均を押し上げる)、平均在院日数が中央値を上回る状態になっていました。中央値に変更することで、入院期間Ⅱの設定がより実態に即した短い日数になります。結果として「入院期間ⅡをIIIに変えずに退院させる」ことへの報酬上のインセンティブが変化します。自院の主要疾患でシミュレーションが必要です。
④ 複雑性係数の見直し(入院初期重視へ)
機能評価係数Ⅱのひとつである「複雑性係数」は、各病院が診ている患者の複雑さ(医療資源の投入量)を評価する係数です。令和8年改定では評価手法が変わります。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 評価の考え方 | 入院全期間の医療資源投入量 | 入院初期(在院日数25%tile値まで)の医療資源投入量を重視 |
| 算出方法 | 在院日数全体の包括範囲出来高点数の平均 | 各診断群分類の25%tile値までの平均包括範囲出来高点数で評価 |
急性期病院は入院直後に集中的な検査・処置・手術を行い、その後は比較的安定した管理に移行します。「入院全体」ではなく「入院初期」に医療資源を集中投入しているかを評価することで、本来の急性期医療の濃度を正確に反映しようとするものです。長期入院の後半部分が係数を押し上げる構造を是正します。
⑤ 地域医療係数の疾患領域別評価導入
機能評価係数Ⅱのもうひとつの重要な係数「地域医療係数」についても見直しが行われます。
定量評価指数の変更
これまでの定量評価は疾患横断的な件数をもとにしていましたが、令和8年改定から4つの重点疾患領域ごとの実績が評価に加わります。
| 新たに評価対象となる4疾患領域 |
|---|
| がん(悪性腫瘍) |
| 脳卒中 |
| 心筋梗塞等の心血管疾患 |
| 周産期 |
体制評価指数への新規項目追加
地域医療係数の体制評価指数にも2つの新規項目が加わります(具体的な項目は厚生労働省告示で確認)。地域での医療体制を整備している病院が追加評価されます。
がん・脳卒中・心疾患・周産期の4領域は、地域の医療計画でも重点疾患として位置づけられています。これらの診療実績を積み上げることが、地域医療係数の向上=DPC収益の向上に直結するようになります。自院の重点診療領域の戦略を見直す機会です。
⑥ 再転棟ルールの変更
DPC算定中に患者が別の病棟に転棟し、その後元の病棟に戻る「再転棟」のルールが変更されます。
| 変更点 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 再転棟の扱い | 一定期間内の再転棟は別入院として扱うケースがあった | 原則すべて一連の入院として扱う(期間制限の撤廃) |
| 影響 | 転棟を繰り返すことで別の入院として高い点数を算定できる場合があった | 不適切な転棟繰り返しによる「リセット」が防止される |
ICU→一般病棟→ICUといった再転棟を行っている場合、一連の入院として累積入院日数でカウントされるようになります。入院期間Ⅲに移行するタイミングが変わる可能性があるため、転棟を含む患者の収益シミュレーションを再確認してください。
⑦ 激変緩和措置
今回の改定では係数の変動が大きい病院も想定されるため、激変緩和係数が設定されます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 既存のDPC参加病院 | 推計診療報酬変動率(出来高部分含む)が±2%を超えて変動しないよう激変緩和係数を設定 |
| 新規DPC参加病院 | 改定前実績との比較で2%を超えて低く変動した場合、所属する医療機関群の平均的な係数値を用いた補正計算を実施 |
⑧ 対応ロードマップ
標準病院群1の要件確認(〜2026年4月)
直近1年間の救急搬送入院件数・全身麻酔手術件数を集計し、パターン①〜④のいずれかに該当するか確認する。該当すれば標準病院群1(基礎係数1.0583)への移行に向けた届出準備を進める。
主要DPC疾患の入院期間IIシミュレーション(〜2026年5月)
自院の診療件数上位の診断群分類について、現行の入院期間IIと「在院日数中央値」を比較する。実態の在院日数が変更後の入院期間IIを超えている疾患があれば在院日数短縮の対策を検討する。
4疾患領域の診療実績把握(〜2026年6月)
がん・脳卒中・心血管疾患・周産期の4疾患領域別の症例数を集計し、地域医療係数(定量評価指数)への影響を試算する。これらの領域の診療強化が係数向上に寄与する。
再転棟ルール変更の影響確認(〜2026年6月)
再転棟を繰り返している患者(ICU→一般病棟→ICUなど)の症例を洗い出し、一連入院として扱われた場合の収益への影響をシミュレーションする。
DPCデータ分析ツール・システムの更新確認(2026年6月前)
DPCの電子点数表は2026年4月に修正版が公開済み。レセコン・DPC分析ツールのバージョンアップ対応状況をベンダーに確認する。
⑨ よくある質問
⑩ まとめチェックリスト
本記事は2026年4月時点の厚生労働省資料および公表情報をもとに作成しています。DPC/PDPSの係数値・算定ルールは告示・通知の内容が最終的な根拠となります。算定にあたっては必ず最新の厚生労働省通知・DPC電子点数表をご確認ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても責任を負いかねます。

コメント